「竜崎、僕にも携帯番号教えてくださいよー」 拗ねたように口を尖らせる松田に、竜崎がうんざりとした顔で「松田さんに教える必要はありませんが。何か?」と言いはなつ。 「そんなあ」 しょげる松田に構わず、竜崎は今日のおやつは何かと冷蔵庫を漁りにいった。 嬉々として本日のスイーツ「苺のロールケーキ」、しかも丸ごと1本にかぶりつく竜崎を横目に、松田は正攻法が通じないなら邪道に走ってやる、と心の中で決意を固める。 夜半。「寝ましょう」とどちらとも取れるような言い方で、それでもスーツの袖口をわずかに引っ張って誘う竜崎に釣られて、松田も一緒にベッドルームに引き上げてきた。 「はい、竜崎。これに答えてください」 二人してベッドに潜り込んだところで、ぺらりと用紙を渡され、竜崎はそれを指先でつまんで顔をしかめる。 「なんですかこれは」 「アンケートです」 紙にはたしかに「おやつに関するアンケート」とある。 『問1 好きなケーキを3つあげてください』 『問2 お気に入りのチョコレートブランドは?』 『問3 和菓子で好きなものは?』 『問4 食べてみたい憧れのお菓子は?』 「……最後のこれは何ですか」 不信げに横睨みする竜崎の視線に射られて松田が身を竦ませる。 『問5 アンケートのお礼にお好きなスイーツをプレゼントします。 携帯番号をご記入ください』 「スイーツはワタリが調達してくれますので、いただかなくても間に合っていますから書きません」 竜崎はサイドテーブルにアンケート用紙を追いやると、「竜崎のけちー」と叫ぶうるさい口を、唇で塞いで黙らせた。 翌朝、裸の肌にあたるひんやりとした空気に身じろぎして目を覚ました松田の隣には、昨晩さんざん精を搾り取られた相手はおらず、かわりにアンケート用紙が枕の上にひらりと置いてあった。 解答欄には、少しめんどくさそうに乱れた竜崎の字で、それでもお気に入りの菓子について説明が書いてある。 「あ」 問5で松田の視線が止まる。 案の定、空欄のままだ。 「やっぱり書いてないじゃないですかー!」 そもそもが浅慮な作戦だったことを棚にあげ、アンケートをテーブルに投げ出す。 「もー竜崎のけち! 今日のおやつはジンギスカンキャラメルにしてやる!」 以前、シャレで買ってきて食べさせた「まずい」ことで有名なキャラメルを、松田はまたわざわざ買ってこようと企みながら、ベッドから降りた。 気分を変えようと遮光カーテンを開けると、まぶしい朝日が差し込む。 脱いで椅子にかけてあったワイシャツに手を延ばす松田の背にもその爽やかな光が注いだ。 健康そうな張りのある背中の真ん中に、黒いマジックで暗号のように書かれた11桁の数字が、光を浴びて浮かび上がっていた。
おしまい
「ハケンの品格」というドラマを大変たのしく観ていたんですが、 くるくるぱーまととっくりを松L変換妄想してはニヤニヤしてました。
ほんでプロポーズの回で 「結婚に関するアンケート」と称して、携帯の番号を 書かせる欄を作ったのに、とっくりったら書いてない。 キー!となったくるくるぱーまがくしゃっと丸めた 用紙の裏にこっそり携帯番号書いてある。 ここに萌えました。松Lで。
というわけで日記に妄想変換SSを書いてみたのをこっちに移しました。 ざっくり一発書きで荒いんですが、こういうのこそネット向きかなあと。