■ハケンの品格de松L変換 その2「メール」

 伊出さん、元気?

 僕は田舎の警察署でバリバリ働いてます。
 なにしろあのキラ事件に関わったという経歴があるんで、
 何だかもう一目置かれちゃって大変ですよ。
 伊出さんは本庁に残って忙しそうですね。
 こっちも、小さいながらもちょろちょろ事件があるんで、結構忙しいんですよ。
 こっちの同僚はみんな現場叩き上げで、いかついけれど、
 僕のことは認めてくれて仲良くやっています。
 そのうちまた出世して、今度は伊出さんの上司になって本庁に戻りますよ。はははは。

松田 

 メール送信をクリックして松田はふう、と短いため息をつく。
 その落とした肩をバシンと叩かれ、びくりとして振り向くと、角刈りのいかつい顔をした同僚刑事が怒り顔で立っていた。
「おいネクタイ、この報告書やっとけっていっただろ」
「え、だってこれは北川さんの担当じゃあ……」
「俺たちは毎日毎日靴をすり減らして歩き回ってんだ。こういうデスクワークはお前らネクタイ組の仕事だろうが。ん?」
 焼けた顔が近づくと、酒の匂いが鼻につく。ネクタイもせず、だらしなく胸元を開けたワイシャツはよれよれで、警察官というよりまるでチンピラのようだった。
「お前さんはあれだろ? 本庁で重大で難し〜い事件捜査に加わってたんだろ? なら、迷宮入りの事件でも解決してみたらどうなんだい」
 からかう口調に周囲にいた刑事たちも笑う。
 松田は黙って自分のデスクに戻った。
 松田が東京都下の田舎の警察署に飛ばされて3カ月が過ぎた。
 事件らしい事件などなく、たまに起こるのは中学生の万引きとか、ちょっとした交通事故だとか、そんなのばかりだ。
 所轄の叩き上げの刑事たちは、すでにそんな日常に倦んでスレている。
 澱んだ空気の中にほおり込まれた松田は、かっこうの餌に過ぎなかった。

 伊出さん。

 ほんとは僕、こっちにきてから堪え難い疎外感と屈辱を味わってます。
 現場叩き上げの刑事たちは、僕のいうことなんてちっとも聞いてくれなくて、
 嫌われ者の転校生ってカンジです。
 同僚からは「ネクタイ」って呼ばれてて、誰も僕の名前を呼んでくれる人もいないんだ。
 馬鹿っていわれてもいいから名前で呼ばれたいよ。
 いつかちゃんと本庁に帰って、また相沢さんや伊出さんたちと難しい事件を捜査したい。

松田  

 けして出せないメールを書いては消す。
 そんなことを繰り返している。
 こういう時にぼんやりと思い出すのは、決まってキラ捜査本部で夜神局長や相沢たちと命がけの捜査をしていた時のことだ。
 そして今はいない探偵のこと。
 情けなさに涙が出そうになって、松田は席を立った。
「どこいくんだいネクタイくん」
「言われたとおり、過去の事件の資料でも漁ってきますよ」
 肩肘をはって部屋を出て地下の資料室へと向かう。
 薄暗い部屋はもう何年も放置された未解決事件の資料が、整理もされないまま放置されていた。その資料の一つを手にとって調書をめくる。
 もちろん文字なんて頭に入ってはこない。
「こんな杜撰な捜査じゃ、事件が解決するはずないよ」
 一通り資料をめくって古びた机の上にそれを投げ出し、椅子に座って机に肘をつき、組んだ手のひらの上に額をつけてため息をつく。頭の中は、いつ本庁に帰ることができるのか、いつここから抜け出せるのかということでいっぱいだ。
「これぐらいの事件、資料を読んだだけでわかるじゃないですか。日本警察の捜査官というのは本当に低能ですね」
 突然、頭の上にそんな声が降ってきた。
 顔をあげると、目の前にはさっき松田がほおり出した書類の束がゆらゆらと宙で揺れている。その端っこをつまむようにして細い指があった。
 調書を摘んだ指先を辿って骨ばった手の甲から細い腕、その根元にある薄い肩、そして鎖骨の浮いた首の上に乗っていたのは……。
「り、りゅうざき!」
「お久しぶりですね松田さん」
 松田を覗き込むようにしているのは、今はもういないはずの探偵。
「なんで……こんなとこに? ていうか、なんで生きて……」
「雇われに来ました」
「え?」
「契約は3カ月。報酬はその間のおやつで結構です。それで世界的探偵が雇えるなら、安いものですよ」
「竜崎が?」
「はい。私がです」
「僕のところに?」
「はい。契約ですから3カ月」
「雇われに?」
「雇って損はさせません。あなたには手柄を立てさせて、本庁に戻っていただきます」
 まっすぐに黒い瞳が見つめていた。
 夢ではないかと自分の頬を叩いてみても、その懐かしい姿は目の前から消えなかった。
「雇っていただけますか?」
「よろしくお願いします」
 松田は深々と頭を下げた。
 いつまでも上げられない頭を、竜崎の薄い手のひらがぽんぽんと優しく叩いてくれた。

ドラマ「ハケンの品格」を面白く観ておりました。
主に松Lとか月Lに変換してはニヤニヤ。
最終回とかやりすぎでしたがいろいろと。
でも面白かったです。

というわけで、ハケンde松L変換妄想最終回。
たぶんドラマの最終回観ていない人はちんぷんかんぷん。

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